本格的な食べる訓練を始めて3週間。毎日の食事は主にゼリー状の食べ物ですが、介助付きで1時間以内に完食できる頻度が多くなってきました。そこで、少しづつ難易度をアップする試みが始まりました。
まずは食物の形態。
ゼリー状、ペースト状の食事は噛む必要が無いので、スプーンで口の奥まで運ぶと、飲み込むだけで食べられます。次のステップは、口や舌を動かして『食べ物を口の奥まで運ぶ』という動作の練習です。
そこで登場したのがキャラメルコーンでした。キャラメルコーンは、口の中に入れると唾液を吸収しながら少しづつ柔らかくなります。柔らかくなったものを舌で口の奥に自力で運んで飲み込む、そんな練習ができます。
さて、実際に妻にキャラメルコーンを手渡してみました。自分で口の中に放り込み、一口噛んで、もごもごさせながらゴックン、と飲み込むことができました。これには、看護師さんと義母ともに大喜びでした。
その後、毎日キャラメルコーンを食べる練習が始まりました。
次に食べる姿勢。
最初は、ベッドの上体の角度は30度で食事をしていました。
枕の下にクッションを入れて顎が上がらないようにしているので、顔の角度は45度くらいです。この姿勢を想像してみてください。元気な人だとその状態で通常の食事を食べるにはちょっと勇気がいる状態です。とろみ無しの水分などを飲もうとすると怖いくらいです。しかし、嚥下障害のある場合は、口の中に入れた食べ物が重力で自然に喉の奥まで運ばれるので、飲み込みやすくなります。上体の角度を30度から徐々に起こしていくと、重力の力ではなく自力で食べ物を喉の奥まで運ぶ必要が出てくるので、食べる難易度は上がります。
キャラメルコーンを食べらることがわかってから、ベッドの角度を少しづつ上げていきました。
転院当初は30度。1ヶ月後には36度~40度に。そしてベッドではなく車いすに乗って上体の角度は45度と、段階的に難易度をあげて食べる練習をしました。
『食べる練習』と書きましたが、朝昼晩の食事を本人が意思を持って食べているだけなので、とても良いリハビリです。理学療法、作業療法のリハビリは、専門のスキルを持った担当者が対応しますので、時間、頻度には限界があります。しかし、食べる訓練は、1日3回、義母が介助をしながら毎日確実に練習ができます。しかも、食べる動作はスプーンを持った手と口と喉を連続的に動かす必要があるので、脳への刺激としてはとても効果的です。
やはり、食べるリハビリを本格的に実施できて良かったと思いました。
本格的な食べる訓練を始めて6週目、義母の仕事は朝昼晩の食事介助、食事後の口腔ケア(口の中に残った食べ物をかき出し、歯磨きをする)で、看護師さんがいなくても妻の食事をサポートできるようになりました。
病院にいると患者は病院の管理下におかれますので、家族が自由に介入することはなかなか難しいですが、とはいえ病院のスタッフが1人の患者にかけられる時間には限界があります。病院にお任せするのではなくて、本人のリハビリにつながることは可能な限り家族がサポートする。その姿勢があったからこそ、効果的に食べる訓練を継続できたのだと思います。
高齢の親を現役世代の子供が介護する一般的な事例とは異なり、病気により障害を抱えた子供をリタイア後の親が介護するという構図だからこそできることなのかもしれませんが。。。
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