2016年3月17日、妻は最初の脳出血発症から3日目でICUに入院していました。
この日、人工呼吸器を外す試みがされました。
人工呼吸器を外して30分程度は自力で呼吸をできていましたが、その後苦しそうな表情をしたために内視鏡で確認したところ、声帯の開閉がうまくできていないことがわかりました。原因は、しばらく人工呼吸器をつけていたことによる一時的なものか、脳のダメージによる麻痺なのか、この時点ではわかりませんでした。
しかし、人工呼吸器の管を喉に入れておける期間は患者への負担を考えると1週間程度が限度なので、『気管切開』の処置を行うことになりました。
『気管切開』とは、手術によりのど仏の下から気管に穴を開けて肺に空気を送ることができるようにすることです。通常は、鼻~のど~気管~肺の経路で呼吸を行いますが、気管切開した穴~気管~肺の経路で呼吸ができるようになります。
回復期リハビリ病院にいた2016年9月頃にカニューレを外すことができ、喉に残った穴は通常は自然に閉じるので、しばらく様子を見ましょうということになりました。穴が閉じるまでは、喉にガーゼを貼って異物が入らないようにしていました。
ところが、待てども待てども穴はふさがる気配を見せません。回復期リハビリ病院の医師に相談しても、特に穴が塞がらないことによる致命的な問題はなかったので、様子を見ましょうの回答のみでした。
2016年12月に転院して本格的に食べる訓練を始めた時に、穴がふさがらないことによる弊害が顕在化しました。
食べ物を飲み込むとき、通常は口を閉じて呼吸を止めて食べ物をごくんと飲み込ますが、気管切開した穴があることで、口を閉じても呼吸ができてしまうので、呼吸と食べ物を飲み込むタイミングがずれて食べ物が飲み込みにくい、という問題がありました。そこで食事の時には、穴をビニールシートで塞いで空気が漏れないようにしていました。
飲み込みに影響があるならば早く穴を塞ぎたいということで、耳鼻科の先生に診てもらいましたが、強制的に穴を塞ぐ手段としては、案①:穴の周辺を意図的に傷つけて直る過程で皮膚が盛り上がるのを何度も繰り返して塞がるのを待つか、案②:手術して閉じるか、でした。
耳鼻科で手術した場合は大きめの傷跡が残るとのことで、30代の女性ですから喉に大きな傷跡を残すのは残念なので、案①で対応することにしました。それでも穴は小さくはなりましたが、完全に塞がることはありませんでした。
次の転院時期が迫ってきて、これまで担当していただいた耳鼻科の先生に診てもらうこともできなくなるのでどうしたものか困っていた時に、耳鼻科の先生から良いお話を聞きました。
なんと、4月から転勤で東京都内の病院に異動するとこのこと。しかも私の自宅から車で10分程度で行ける病院です。
これで4月以降も診てもらうことができるようになりました。
また、異動先の病院には形成外科があるので、耳鼻科で手術するよりも上手く穴を塞ぐことができるかもしれないとのこと。
4月以降に、異動先の病院の耳鼻科外来へ先生を訪ねて形成外科を紹介してもらい、形成外科で手術して穴を塞ぐ、というストーリーが出来上がりました。
これまでもそうですが、私達家族が困ったときには誰か助けてくれる人が現れるという幸運に恵まれていて、ただただ感謝です。
【ご参考】その後、実際に穴を塞いだ話は『気管切開後の穴を閉じる(2017/10)』をご覧ください。
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- 食べることと出すこと(2017/2)